シャア、という音で目が覚めた。
どうやら居眠りしてしまっていたらしい。
目を擦り体を起こすと、金色のクラウンと銀色の長髪が朝日で光っているのが見えた。
彼はリフと言ったか。先ほどの音は彼がカーテンを開けていた音のようだ。
「今日はいい天気ですよ」
代わり映えのない、いつも通りの会話。
いつも通り散らかった部屋を少し片付けながら、リフは欠伸をする。
俺は「そのようですね」と笑って、木で出来た椅子に座りなおした。
リフはうーんと伸びをして、一つ息を吐く。
そうしてからくるりと振り返った顔は、綺麗な笑顔だった。
「一緒に両手の訓練しません?」
そう言って軽く首を傾げるものだから、なんだか俺には拒否権が存在しないように思えた。
――彼は同じ部隊の仲間で、俺と同じ両手武器を扱っている。
この部屋はその部隊で借りている部屋で、ついつい自分の家に帰らずここに寝泊りしてしまう。
最近入ったばかりだが、この部隊は酷く居心地がいい。
だからだろうか、この部屋も居心地がよくてたまらない。
「構いませんよ。それにしても、急ですね」
優しい笑みを浮かべて椅子から立ち上がり、机においていた兜に手を伸ばした。
リフレインはその言葉に照れた様に笑って、困ったように頷く。
「実は、ノレさんに「もっと練習しなさい」と怒られたんです」
―――……。
彼は、俺たちと同じこの部隊の「ノレ」という男と好き合っているらしい。
副部隊長や、ゴシップ好きの部隊員が言っていた。
「そうですか、大変ですね」
にこ、と笑う。ああ、なんて偽善の笑みなんだろうか。
コトン、と兜をもう一度机に置く。
「じゃあ、訓練所で待ってますね」
「待って」
部屋の扉を開けようとしたリフの包帯を巻いた手首をつかむ。
驚いたように振り向いたリフをそのまま扉に押し付け、強引に唇を重ねた。
ぬるりと舌を滑り込ませ、温かい口内を犯していく。
唇を離すと、リフの顔は真っ赤に染まっていた。
その表情は驚きに満ちていて、いまにも「何故?」と言いそうな顔だ。
「初心なんですね。ノレさんにいつもされてるんじゃないですか?こういうのは」
「……っ!?そ、そんな事ありません……!」
「そうですか」
れろ、二の腕に舌を這わせるとびくりと震えるその身体。
見上げるようにリフの顔に目を移すと、眉をハの字にさせていた。
それがおかしくて小さく笑ってしまう。
「じゃあ、どういうことをされてるんです?」
「やめっ……やめて下さ……」
滲む涙が、ほとりと頬に落ちる。
もう一度、口付け。
「訓練しに、行きましょうか」
「……え、」
ふう、ひとつため息を吐いてリフの手を離す。
リフは拍子抜けしたような顔をして、ぽかんとこちらを見つめている。
「練習しないんですか?」
「え、あ、ま、待ってください」
兜を被り部屋を出て行こうとする俺に、リフは慌ててついて来る。
訓練所に向かう俺の顔色を伺うように覗き込む姿が、なんとも面白い。
「……練習する気ないならこなくていいですよ」
突き放すようにそういうと、リフの顔は困ったように歪む。
唇を噛んでから、俺に向かって小走りで駆け寄ってきた。
「待ってくださいよスパさんっ!」
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