黒い髪の、黒尽くめの男がそこにいる。
彼の黒い髪の中にまぎれるようにあるのは、灰色の硬質な角。
襟の高い服から伸びるのは妙に白く、筋肉の見当たらない細い腕。
まるで女のようだ、とよくからかって居たものだ。
指もまた細く、ほんのり赤く染まった指先は細い瓶をつまんでいる。
瓶を傾けたらりと垂らされた其れは青く、妙にどろりとしていた。
ひやりと冷たく、身体の凹凸を伝って行く。
それは自分は滅多に使わない、所謂「ハイパワーポット」という奴だ。
一本1リング。それを3本目。
こんな事に使うなんて、彼はなんと太っ腹なのか……。
……いや、そんなことはどうでもいい。
噛んだ猿轡のせいでくぐもった声は、必死で搾り出しているのに酷くか弱い。
「肌色と青、凄く合わないな。やはり赤じゃないと……どうした?」
そう言って首を傾げて微笑む男。
妙に長い前髪が垂れ、その隙間から笑っていない鋭い赤い目が覗く。
――彼はずいぶん見慣れた顔で、同じ部隊の男だ。
大抵いつも無気力で、ずっと首都の部隊室に篭っているような男なのだが。
……無気力?今の彼はそんなこと無い。むしろ、獲物を見つけた獣のようで。
じたばたと暴れると、彼は仕方ないなぁと呟き、俺の猿轡に手をかける。
「しゃべりたいのか?一言だけなら、構わないよ」
細い指で解かれる猿轡。
ずっと口を開いていたせいで、顎が痛い。
俺はようやく声を出して、その言葉を告げた。
「(ここにセリフを入れてください)」
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