「母上が、死んだときにそう思ったんだ」
「お坊ちゃま…」
母は死んだ
ゴンザの自我が目覚めてすぐ
母は病気だった
…それが急に悪化して、遠くに逝ってしまった
「それに、笑っていないと父上が怒るだろ?反抗なんかでき無いんだ」
「…辛いときには笑わなくてもよいのですよ」
ジェイドは静かに笑った
「ご主人様も…きっと分かってらっしゃいますよ。
お坊ちゃまが辛いと思っていること」
「じゃあ何でずっと帰ってこないんだ?」
ジェイドは困ったような顔をした
ツキン、と心が痛む
「…ごめん」
「いいのですよ、所詮私は執事ですから」
寂しく笑うとまた、頭を撫でた
「お城は楽しいですか?」
「うん。すっごく楽しい」
ふふ、と静かにジェイドは笑った
空になったカップを床に置く
「リン…姫様が、凄く可愛いんだ。凄い好き」
「それは恋かも知れませんね」
恋?
恋って云うのは…
「その…アイシテルってこと?」
「そうです。人を愛せるということは…お坊ちゃまは優しい人なのですね」
優しい
そんなのは始めていわれた気がする
…嬉しい
「じいやも、優しいよ」
「それは。光栄で…ゴホゴホッ」
ジェイドは急に咳をした
「じいや?」
「いえ…どうやら風邪をひいてしまったようです」
ジェイドは弱々しくそういった
心配そうに咳をするジェイドを見つめる
「大丈夫です。さぁ…ちゃんとお休みになってください」
「でも…わっ!?」
ジェイドは軽々しくゴンザを抱き上げてベッドに入れた
「ちゃんと休むんですよ?いいですか?」
「…うん」
ジェイドは微笑んでゴンザの頭を撫でた
ゴンザは静かに目を閉じた
優しくて、気遣いしてくれて
まるで母のようで
ジェイドが愛しいと自分は思ってしまった
ジェイドは男…しかもおじいちゃんだけれど
(愛しいと思ってしまった心はもう止まらないから)
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