ぼんやりと部屋の中で机に肘をついて窓の外を眺めていた。
外はどんよりとした雲が空一面に広がっていて、今にも雨が降りそうな天気だった。
――ああ、こんな日は戦争に行きたくないな。
憂鬱になりながら、俺はため息を吐いた。
部屋には自分しか存在せず、静寂だけが支配している。
向かいの宿屋にはちょこちょこと客が入っていく。
今日は誰も帰ってこないのかな、とか。
よく戦争なんて行ってられるな、とか。
不意に部隊チャットに「こんにちはー」と数行流れて、俺はハッとした。なんだ、独りじゃない。
少しだけ安心して重い腰を上げた。
外は湿った冷たい空気が漂っていて、酷く肌寒く思った。
白い息を吐いて、襟を立てた。
冬が近づく。――否、もうそろそろ冬だ。
この雲も、雨ではなく雪を吐き出すんじゃないだろうか、と思った。
「さっきの戦争は大変でしたねー」
「あぁ。ゆっくり休みてぇ」
ふと宿屋の方に目をやると、宿屋前に部隊員のウォリアーが二人いた。
戦争に行っていたのだろう。傷を撫でながら話していた。
――そういえば二人は前々から仲が良かったっけ。
話しかけようと口を開いたところだった。
「しっ!黙って!」
「…!?な、んだよ」
無理矢理手で口を塞がれ、俺はぎろりとその人を睨んだ。
…これまた部隊員だ。目が楽しそうにキラキラ輝いている。
俺と彼と、その二人。
大通りだというのに辺りにはそれ以外に数人いるだけだった。
「実はね、あの二人が出来てるって噂なんだ」
そういえばこの人は噂好きだっけか、と呆れる様にため息を吐く。
どうやら彼はずいぶん前から二人を追いかけていたらしく、少しだけ汗の粒が見える。
これまた無理矢理路地に連れ込まれ、一緒に観察することになった。
二人は楽しそうに談笑して、宿屋に入っていった。
「やっぱりコレはきた!」――いや、友人内でもあんな感じに入っていくだろ。
ササッと素早く彼は二人が取ったであろう部屋の隣を取った。
…なんでこの人はこういうことに関してはこんなに素早いのか。
それを聞いてみると、「それをネタにしていじるのが楽しいから」と笑いながら言った。
そうとうドSだな、と再確認した。
「…静かだね」
「寝たんじゃないのか」
「えー、つまんないの」
つまんないって、おい。
俺は何度目かのため息を吐き、ベッドに寝転がる。
両手の方は無口だけど優しい笑みを良く浮かべていて、そして強い。
片手の方は少し口が悪く、けれど頼りになる奴だ。
そんな二人が…否、もしかしたら。
信じられないが、この部隊のことだ。もしかしたらあるかもしれない。
「…おっ」
壁に耳をくっつけた彼が小さな声を上げた。
そしてその口角が上がっていく。
…何か聞こえたのだろうか。
手招きをされて、俺は同じように壁に耳を付けた。
――なんだかんだ言って、興味はあるんです。
”…んっ…あ、や…”
ほんの小さな嬌声。
壁越しだから仕方ないが、確かに聞こえた。
…なんと、いうことだ。
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V ~-v('A`)> <…ふぅ……
[ □] ヘヘノ
――後日。
「聞いちゃった」
口元を歪めて、にたりと笑った。
…ああ、やっぱりこの人はドSだ。
両手の彼はそれを聞いたとたん顔を真っ赤にして、片手の彼は噴出し、爆笑した。
「んだ、バレちまったか」
「な、なんっ、なんっ…」
あたふたと慌てる姿が、少しかわいそうに見える。
周りの皆が何々ー?と集まってくる。
そんな周りの人たちに、片手の彼は慌てる彼の頭を撫でて笑いながらい言った。
「こいつ、ベッドの中だともっと喋るんだぜ」
――アッパーを喰らいながらも笑っていて、俺も少しだけ笑った。
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