「や、めろ…バロン…っ!!」
黒い鎧を着た男が何かをほざいていた気がした。
俺はそんなものを無視して、少年を抱き上げる。
愛しい少年の体は氷のように冷たい。
そんな彼に優しく口付けを落とす。
彼の大事な仮面は壊れて、どこかに落としてきてしまったようだった。
彼が起きたら、きっと怒られるだろう。
露出した刺青だらけの肌に彼の鎧の羽があたり、くすぐったい。
俺は小さく笑ってぎゅっと抱きしめた。
愛しい。狂ってしまうほどに、君が。
――それにしても酷く周りが煩かった。
敵と、味方が、俺たちを囲んで笑っているようだった。
ケタケタと、ゲラゲラと。
「何がおかしい」
ぎろりと皆を睨みつけるが、奴らはとまらない。
ヤメテオケ。
ソレハ――ダ。
「煩い、邪魔をするな!」
冷気が俺の周りを渦巻き、奴らを吹き飛ばしていく。
なぜだか魔力は減らずに、勝手に冷気が吹き付けるようだった。
何度も吹き飛ばして、後に残ったのは沢山の屍体と瀕死だというのに笑う奴ら。
中には女や子供もいたが、まだ笑っていて不愉快なので殺した。
誰もいなくなって、残ったのは俺と少年だけ。
少年の体は硬い。きっとさっきの冷気で冷えてしまったのだろう。
「ごめんな、ウェル」
俺は優しく微笑んで少年の髪を撫でる。
眠っている彼も少しだけ、微笑んだ。
ぺたんと座り込みぎゅっと抱きしめる。
暖めようと必死になっても、彼の体は冷えていくばかりだ。
「もう鴉はいないんだ。一緒に眠ろう。あの家で、また…」
*
ウェイブ()笑
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