雨が、降っていた。
動き回り、火照った身体が冷えていく。
地に広がる赤が、雨で滲む。
見下ろしたその男は、斧を投げ出し情けなく尻餅をついて俺に命乞いをしていた。
「いやだ、しにたくない、たすけてくれ」
歪んだ顔に、ぼろぼろとこぼれる涙。
…なんと、情けないのだろう。
先程まで弓を持った俺に襲い掛かっていたくせに。
もともと俺は短剣使いだ。
だから持ち替えてブレイクダンス。
この僻地は俺の庭。
追いやった途端に、これだ。
「…大丈夫だ、死にはしない」
ククッ、小さな笑みが零れる。
ざくりと短剣を突き立てると、男は絶望の表情でそのままがくりとそこに倒れこんだ。
刹那、男の姿は消えて、俺一人になってしまった。
…ふと、生死について考えてみた。
戦争で…死者は出ているのだろうか。
いつもキープに戻るだけで、死んではいない。
…毎回不思議だったのだ。何故俺は死んでいないのか、と。
魔法が肌を削る、弓が胸を突く、斧が切断する。
そんな感触が残っているのに、何故俺は生きているのか。
始まりは、クリスタルだった。
そんな…どこかで聞いた昔話。
クリスタルが世界を作り、クリスタルが全てを創造した。
…この大地を、この…人を…?
俺も、あの男も、クリスタルで出来ているのか?
…寒気が、した。
俺は酷いことに気付いたのではないか?
雨は、まだ止みそうになかった。
*
自分がクリスタルで出来てると知ったら
凄い嫌悪感が襲うと思うんだが。
あ、これ仮説ね。どうせゲームだしなんでもありさ^q
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