「…頭が痛いです。」
「飲み過ぎたんじゃない?まぁ"あの"隊長も酔ってたし、皆浮かれてたんでしょ。」
マキは朝食の準備をしながらそう言った。
ふと、部隊員の部屋がある別館の方から、エレスが歩いてくるのが見えた。
「あ、エレスさん。今日も可愛らしい。」
「…こうだからルキさんはシアンさんに好かれないんだよ…。」
飽きれたように溜息をつくと、ルキは悪気もなさそうにニィ、と笑った。
「浮気は文化ですから。なんならマキさんも、」
「遠慮します。」
きっぱりと断ると、ルキは少し残念そうな顔をした。
新人―パラスというらしい―やら、隊長やらがいつもの部屋に集まり始めていた。
ルキはマキとエレスがいるキッチンからその様子を見ていた。
色々しゃべっていると、部屋の扉が開いてシアンが入ってきた。
パラスと一言しゃべると、机にあった酒を一口。
「あ、シアンさん、来てたんですね。」
「…………」
ふい、と顔をそらされる。
首には何故か包帯が巻いてあった。
…まさか怪我でもさせてしまったんだろうか。
「嫌われてしまったみたいなんですが…。」
「昨日何かしたんじゃないの?思い出してみたら?」
マキはクスクス笑いながらそう言った。
ルキは首をかしげて昨日のことを思い出そうとする。
「昨日、ですか?確か…酒を飲んで酔いつぶれてシアンさんが私を部屋に送ってく…」
…ッボン!
何かが爆発したような音がして、不思議に思って振り向く。
そこにはルキがうずくまっていた。
「ど、どうしたんですか?」
「…すいません、気にしないで下さい…」
そういうルキの顔は真っ赤だ。
マキはそれを見て「あぁ、」と言うとまた笑って、ルキにりんごを渡した。
「一歩前進、ですね。」
「…っ~~…」
ルキは一頻りうなると、溜息をついた。
そして、困った様な…嬉しそうな微笑を見せた。
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