ルキがずっとこっちを見ていることに気付いたのはついさっきだった。
彼の趣味は人間観察(と、mob狩り)らしいから気にしないようにはしていた。
けれどあまりにも長い時間見ているので何か用か、と声をかけた。
「別に、見てるだけです。」
くるかとは思っていたが…やはりこうだ。
やる気がないのか、ただボケているだけなのかは、知らない。
小さくため息をついて窓の外を見る。美しい青空だ。
「シアンさんは。」
不意にルキが名前を呼んだ。
振り向くと彼は気だるそうに机に頬杖を付いてこちらを見ている。
切れ長の赤い瞳。…俺は、この眼が苦手だ。
よく見ると少しだけ瞳孔が裂けていて、少しだけ恐ろしくて、引き込まれそうになるのだ…。
見つめられると、調子が狂う。
「冷たく装っているけど、実はもっとフレンドリーなんじゃないですか?」
「…は?」
予想外の問いに眉をひそめる。
「嗚呼、絶対そう。だって眼が優しいですから。私なんかよりもずっとずっと。」
いつもの様に少しだけ目を細めてにぃ、と笑った。
…幸い、部屋の中には二人意外誰もいなくてこの話を聞かれることはなかった。
「もっと、気を抜いてもいいと思いますが?仲間なんですから、ね。」
「っ、俺は…!」
そんなんじゃない、違う、そんな言葉が喉元で止まる。
「…なんで、分かった。」
…なんで、俺はこんなことを言っている?
ルキはニコニコ笑いながら目の前に立った。
「私の目を舐めて貰っちゃ、困りますね。」
ぴ、と右目をさしてにぃ、と笑う。
その顔はとても妖しく、奇麗であった。
「あ、…っ」
じり、と後ずさりをする。そういえば自分は窓際にいて、背中には壁で。
逃げ道がないことにいまさら、気付いた。
つぅ、とルキの指が頬をなぞる。
ぞくり、と背筋が震えて、耳に吐息がかかる。
ルキの膝が脚の隙間に割り込み、利き手の手首を掴まれる。
「…シアン、さん。私は、」
ガチャリ…バタン。
「あれ?ルーちゃんにシアンさん。何してるでやんすか?」
「あ、隊長。お帰りなさい。」
隊長に向けて微笑むと、そのまま何もなかった、というようにルキは静かに離れた。
そのまま扉を開けて部屋から出て行こうとする。
「…!ルッ…」
正気に戻って慌てて声をかけ、引き止める。
――私は、…何?
ルキは目を細めてにぃ、と笑うと人差し指を唇に当てた。
隊長はそんな二人を見て不思議そうに首をかしげた。
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