「兄上」
「…また…来たのか」
劉魂は青白い顔をこちらに向けた。
あまりにも生気のない、げっそりとした顔だった。
この間の様な怒声は降ってこない。
怒鳴る元気もないのだろう。
ふと食事に目をやるとちっとも減っていなかった。
…食べて、いないのか。こんなに痩せる訳だ。
「食事をしないと死にますよ」
「…別にいい」
「それじゃあ私が、困ります。ほら、食べて」
ぐい、と顎をつかんで食べさせようとする、が劉魂は無理に顔を逸らした。
少しだけイラ付きながらもまた箸を押し付ける。…食べない。
「そんなに食べたくないんですか」
「…」
無言で顔を逸らす。
ああ、何でこんなに生意気なのか。
「…兄上、何故私が兄上を生かしているか分かりますか?
私はね、貴方のことを愛しているんです」
無表情でそう告げると、劉魂は目を見開いた。
す、と素早く顔を近付けると劉魂はひ、と息を呑んで後ずさりをした。
「この部屋はね、私と、貴方だけしかいない。他人は入れないんですよ」
呼ばない限り誰も来ない。…無論、呼ぶ訳がない。
文字通り二人きりなのだ。
「貴方は私を見ていればいいんです。私だけを」
にぃ、と口を歪めると劉魂はガクガクと震えだした。
恐ろしいのか、それとも。
「まさか貴様…実の兄の私を犯すか…!?」
「さぁ。でも今日は気分が乗らないんでね。…怪我、したくないでしょう?」
少しだけ低くそう言うとまた少し後ずさりをする。
それを見てまた少しだけ笑うと、彼の顎をつかみ、顔を近づけた。
舌を入れると咬んで来たが、気にせずに咥内を弄ぶ。
じわり、と血の味がする。
「…愛していますよ」
そっと耳元で甘い声を囁く。
劉魂は呆けた様に固まっている。
それを見て苦笑するとこの部屋から出れる一つきりの扉に手を掛けた。
「また来ますね、兄上。…ちゃんと食事してくださいね?」
"じゃないと、抱く時に私がつまらないですし"
その日から兄はきちんと食べるようになった。
どうやら嫌でも力をつけて抵抗するつもりなのだろう。
嗚呼、楽しい。
貴方は私のことだけ考えていればいいんです。
…そう、私だけを見ればいい。
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