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2007/08/20

歪んだ愛情 1

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「兄上」



劉邦はガチャリ、と扉を開けた。

無駄に広い部屋。天井も、壁も、床もすべて白で統一された無の空間。



その無の中に、一人の男がいた。



彼は劉魂…自分の兄だ。

劉魂は眉を顰め歯をぎり、と食いしばり自分を睨んだ。



「何故殺さない!掟を守らぬ心算か!?」

「ふふ、何ででしょうね」



彼をあざ笑うようにくつくつと笑う。

劉魂はそれにイラついたようで、また怒鳴りつけた。



「そうそう、今日は下町の甘味を頂いて来たんです。

 兄上、甘いものが好きでしたよね?」



怒声を遮ってそう言うとそっと袋を開けて目の前に置く。

劉魂は少し躊躇ったが、手で払い、中身が床に散らばった。



散らばったそれ―兄の好きだった飴だ―を見て歯を少し食いしばる。



「要りませんか?そうですか…残念ですね」

「っ…大体貴様は…ぐ、がっ!?」



劉魂は行き成り咽ると、喉を押さえて蹲った。

どうやら喉が涸れて、呼吸器官がおかしくなったようだ。



「ほらほら、そんなに叫ぶから」



ふぅ、と小さくため息をついて劉魂の顔に触れる。



「っ…触るな!」



ぱん、と軽い音がして手が弾かれる。

ひゅうひゅうと劉魂の喉が音を立てている。



「私に…触るな…っ!」



苦しそうに歪んだ顔に汗が伝う。

可愛そうに、と呟いてハンカチを渡してやる。



やはりそれも捨てる。

素直じゃないですね、と言うと劉魂はまた睨んできた。



使用人の煉が食事と飲み物を持ってきた。

それを劉魂の傍に置くと、何もいわずに部屋を出て行く。



自分も他の散らばった物は全てそのままに、部屋を出ようとする。



「ああそうだ。兄上、お大事に。…また来ますね」



目が「もう来るな」と告げている。

それを見てクス、と笑うと扉を閉めた。





私は知っています。兄がこの後飴を食べて泣いていた事。

私は知っています。兄がこんなにも私を嫌うのは生かしていてくれているから。



私は知っています。兄はまだ生きていたいのだと。





そうそれは声が、枯れるまで



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