「じゃあ聞くけどな、ゴンザさんよ。…王をどこにやった」
口を開いたのはエースだった。
随分、年を食っているな。よくあれで護衛など出来るものだ。
くす、と呆れるように笑って、残酷な現実を告げた。
「君達、それくらいもわからないの?オイラが殺して捨てちゃったけど?」
ひ、と誰かが息を飲んだ。
巫女と呼ばれる少女だ。こういうものには耐性がないのだろう。
その中で、唯一冷静を保っていたキングが呟いた。
「もう一つ。ジャックはどこだ?」
「彼女はオイラの庭にいるよ。ゆっくりと、調教してる」
「…歪んでるな」
キングは皮肉そうな笑みを浮かべて、ゴンザを睨みつけた。
気にするそぶりをまったく見せず、ゴンザは背を向ける。
「…ま、オイラはジャック君調教のために帰るから」
びちゃ。
足首に濡れた感触が走る。
目を落とすと、ずたずたで真っ赤な血に覆われた手が足首を掴んでいた。
「逃がさ…へんでぇ…?」
「おや、君まだ生きてたの?クス、しつこいね…こっちにくればいいのに」
「アホか…げふ、人殺したくてこれ入ったんちゃうねん…っ!」
ジョーカーは自分の槍を掴み、こちらに向けた。
…本当に、しつこい男だ。
「折角生き延びたのに。もったいないねぇ」
銀色の鎖が、ジョーカーの脚に、腕に、絡みつく。
「さよなら。きっと…もう会うこともないでしょ」
ぐしゃ、と肉と骨を断ち切る。
その生々しい感触が鎖を伝って、感じる。
そう、これ。オイラはこれが好き。
満足して、完全に転移の扉を開く。
真っ赤な薔薇の花びらが扉の向こうから溢れて、舞う。
背後から、少女の悲痛な叫びが聞こえた気がした。
(任務、完了。すぐに帰るから)
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