「ジャック君」
「………」
「ジャック君?」
「……」
「ジャック君たら」
「…煩い」
ジャックは窓の外を眺めていた。
少々うっとおしそうな目をこちらに向けて、すぐに目をそらす。
机に置かれた食事はちっとも減ってなかった。
痛みかけたそれを、ごみ箱に捨て、新しいものを置く。
「ねぇ、ちゃんと食べないと体壊すよ?」
「別にいい」
ジャックはそれだけ告げると、またプイ、と窓の外を見てしまった。
酷く寂しげで、自分の入る隙間のない様な…そんな背中。
「ねぇ…こっちに戻ってこない?」
「…断る」
考えていたとおりの答え。
…彼女は、向こうに染まりすぎた。
「そう…あっちに未練でも?」
「俺の居場所はあそこだ」
ジャックはこっちを見ずにはっきりと、そう言った。
…その時、自分は酷く歪んだ笑みを浮かべただろう。
「居場所がなくなったら君はどうする?」
笑い混じりにそういうと、ジャックは驚愕したように振り向いた。
す、と近付き顎を掴む。
「君の事・・・一度壊してあげるよ」
…一つ、ジャックの唇を奪うとそこから消える。
行き先はギレスイード。
目的は、王の暗殺。
(壊して全てをなくせば、そこからはじめられる)
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