忍者ブログ

 Novel   Index
[PR]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

2008/07/09

34

拍手





ある日の、事だった。


それは彼女、リン…いや、ジャックを見つけて会いに行った、その三日後。

人が呼んでいると聞いて行ってみれば、そこにはムスッとした顔のジャックが立っていた。



「…帰ってくる気になったのかい?」
「…話がある」



少し、目を細めた。
話?この自分のことが大嫌いなはずの彼女が?



なんだか、楽しいことになりそうだった。
静かににっこりと笑うと、そっとジャックに手を差し出した。



「お手を、お姫様」



ジャックはその手を冷たく、無言で弾いた。






「それで…ご用件はなんだい?」



カチャ、と紅茶を入れながら、せわしなく部屋の中を見回しているジャックに声をかけた。
ジャックは酷く嫌そうな顔をして行った。



「俺の所にくるな。もうほって置いてくれ」
「酷いな、ジャック君たら。流石のオイラでも傷付くよ?」



「…そのまま死ね」



目が本気だ。彼女なら腰のナイフでそのまま殺しにきそうだ。
…まぁ、そんなのにやられる自分ではないが。



苦笑して「愛のこもった」紅茶をジャックの前に置いた。
…本当は、「愛」なんて入れたくはなかったのだが。



「わざわざ来てくれたから期待してたのに…いつオイラの物になってくれるんだい?」



その問いかけへの答えは、なかった。
嫌そうな顔が全力で否定しているようにも思えた。



彼女の好きなアッサムティー。
一口だけ口に含み、ほっと一息吐く。

飲んだ。確実に。「愛」を。


はは、と少しだけ笑って

「無理やりでも、いいんだよ?」

…そう言った。



つかの間の沈黙。


彼女は目を見開き、そのまま床に倒れこんだ。

ガシャン、と大きな音を立ててカップが割れ、残りの紅茶が床に飛び散る。



「油断はいけませんよ…ジャック君」



彼女を見下ろしてゴンザは言った。
その目は酷く冷たく…歪んだ笑みを口元に湛えていた。



完全に意識のなくなったジャックを抱き上げ、一つ口付け。




「おかえり、リン」






(これからも僕が君を守るよ)




PR
 Novel   Index
忍者ブログ [PR]