「またすぐ来るから待ってなよ!巫女サン!?」
「お前は黙っていろ。…隊長、任務遂行、任せます」
不意にそんな声が聞こえた。
ふと二人のほうに目を遣ると、どうやら移転の術で強制的に移動させられたらしく、二人はそこに居ない。
…それだけで満足したかのように安堵の溜息をつく。
脳みそはプリンかゼリーで出来ているんじゃないだろうかと思うほど平和な頭だ。
「はいはい皆さん注目ーっと。まだ、オイラがいるからね」
わざと軽い声でそういうと全員が一斉にこちらを振り向き、小さな悲鳴を上げる。
幸せそうな、安心した顔が崩れるのは見ていて楽しいものだ。
気が向いたのでジャックが寝ているうちに全てばらしてしまおうと考える。
「はい、ここで問題。ジャック君の性別は?」
「え、男…でしょ?」
「ぶっぶー。次、ジャック君の左目の色は?」
「…青?」
残念、と嘲笑ってジャックのヘアバンをはぎとり、長く伸ばした髪を退ける。
…目をつぶっているので見えない、か。
「ジャック君にどれだけ信用されてないか…ばっかみたい。とにかくジャック君はオイラが連れて帰…」
「ふざけるな…っ!」
彼女の右拳が顎を掠った。
驚いたような顔をしつつ、そのまま反動で腕から抜け出す。
避けた。不意打ちの攻撃を。当たり前のように。
わずかな風がすべて教えてくれる。君の攻撃は僕には当たらない。
クス、と笑うとジャックは舌打ちをしてまた此方を睨んだ。
「酷いなぁ…オイラは君のことを心配して言ってるんだよ?」
「うるさい!!!俺は…俺はあんなこと望んでなんかいない!!」
そう怒鳴り散らしてさりげなく「死ね!」と言った。
…随分昔と変わってしまったようだ。だが、それさえも愛おしい。
「まぁいいや、きょうは諦めるよ」
少し肩をすくめて言うと、周りの人々はほ、と溜息をついた。
この平凡な人々を壊してしまいたい。
人を壊す右腕が疼いたが、それを押さえ込んでショウの終わりのように頭を下げる。
「オイラはずっと待ってますよ、ジャック君…」
(君の為なら、いつまでも)
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