Mad person (狂った人)
自分なりに精一杯愛していたつもりだった
自分なりに優しくして、大切に扱ったつもりだった
自分はもういないウィルに負けたのか?
それとも沢山人を殺したから?
人を沢山殺した手は赤く染まって
どれだけ洗っても落ちない、汚れ
なんだか何もかもが馬鹿らしくなった
丁寧に扱って、大切にして
それなのに彼女は逃げた
そう、最初から捕まえて、閉じ込めてしまえばよかったのだ
何だったら薬でも使って狂わせてしまうのもいい
ずっとずっと自分だけのものにして
自分がいないと駄目になるくらい犯してしまえばよかったのかもしれない
そうすれば彼女は…
暗い色の軍服を捨てた
「部隊」というものに縛られたくなかったから
鬼狐族という自由な種族がいることを知って
自由の意味をこめて資料を探し、それに扮した
着物という動きやすい衣服
目元に塗る赤いものは化粧だろうか?
けれどやっぱりピアスは捨てられなかった
青い目も止める気にはならなかった
「君たちが新人の…えーっと、ヴァルツ君とヴェルネ…さん?
って…女の子かぁ…」
ゴンザは困ったような顔をして頭をかいた
書類にはきっちり「女」と書かれている
汚れたぼろぼろの服
…服というより布切れに近いかもしれない
ヴェルネはギロ、とゴンザを睨んだ
おや、と目を見開く
「くすくす、威勢がいいのは嫌いじゃ無いよ」
隣に居るヴァルツはずっと静かにしている
と、ゆっくりと彼は口を開いた
「…隊長殿、何故他の人たちと服装が違うのですか?」
「へ?あぁ、精神的な意味でねー…」
うきうきと嬉しそうに説明し始める
するとヴァルツは小さく溜息をついた
「別に説明しなくていいです」
「…うーわー…すっごい傷付くなー…」
はは、と乾いた笑いを浮かべてそう言った
ヴァルツの目の奥の腐った瞳
ヴェルネの目の奥の濁った光
見込みはある、かな?
そんなことを考えつつ小さく微笑み、二人の頭を撫でた
「分からないことはすべてオイラに聞きなよ?
…なんでも、教えてあげるから」
ニィ、と笑うと二人の背中を強く叩く
二人は少しだけ不快そうな顔をした
「…子ども扱いはしないで下さい」
「はいはい。それじゃあこれからよろしく」
そういい残して二人に背を向けた
ヴェルネが何かを言っているようだったが気にしない事にした
見込みはある
…手駒がこれでまた増えた
部下なんて所詮ただの道具
どうせ使い捨てなのだから
オイラが何をしたって、いいでしょう?
(だって自分がリーダーなんだもの)
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