シュラが死んで、皆忙しいようだ
死亡原因は不明
争った形跡もなく、薬物は検出されなかった
残らない毒を作るなんて自分には簡単なことだったから
それに検査をしたのも自分
隠蔽するなんて事は簡単なのだ
新しい隊長には誰がなるか?
何故だか、自分だった
まだ成人すらしていないのに?
確かに殺した人数も多いし、相手もレベルの高い人ばかりだ
隊長になってみるのもいい気がした
仕事はやりたい物だけやればいい
何をしても全て許される
部隊を支配できる
部隊で一番偉いのだから
ジャックは誰とも喋らず端のほうでナイフを磨いていた
そっと近づき、その肩を叩く
「ジャック君。今日からオイラ、隊長になったんだ」
にこ、とゴンザは笑った
ジャックは青白い顔をこちらに向けた
目は虚ろで、薄くくまができている
「もしかして寝てないの?なんなら薬調合してあげるけど」
「いら…いりません」
ふい、と顔を背ける
そう、と言って背を向けて歩んでいく
隊長になったから敬語なのだろうか
そんなことを考えつつ自部屋に向かう
「…あ、ゴ…隊長、ここ周辺の地図とか持っていますか?」
「え?あぁ、あるよ」
ゴンザは懐に入っていた地図をジャックに手渡した
ジャックはぎゅ、とその地図を握り締めた
「…有難う」
何かに使うのだろうか?
でも、何のために?
そんなことを考えた
そして
ジャックは消えた
探しても探してもどこにもいないのだ
ウィルが死んだ。逃げろ。地図。…部屋に残った一枚の紙。
それはジャックが逃げ出したことを表していた
「もう耐えられない。
さよなら。
…隊長、安らかに」
小さな丸い字
紛れもないジャックの字だった
逃げた
逃げたのだ
彼…いや、彼女は
自分の前からいなくなったのだった
(置いていかないで、オイラも連れて行って、一人に、しないで…)
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