ウィルが死んだ
嘘なんかじゃ無い
血塗れのウィルを自分が治療をした
そして、看取った
頭を撫でてくれる人はもういなくて
あぁ、また愛しい人を亡くしてしまったんだ
その日からジャックは不安定だった
隊長はあのシュラになった
隊員はみな嫌そうな顔をした、が逆らえば死ぬ
…逃げることなんて出来るわけが無いのだ
仕事が減った
全てあのシュラのせいだ
自分にとって仕事のストレスの発散
しかし減ったのだ
そしてストレスの増加量が増えたのだ
日に日に耐えられなくなっていく
日に日に殺意が積もっていく
――お前が死ねば楽になるのに
イライラしながら廊下を歩む
真夜中の廊下は暗く、静かだった
その静寂を破るように大きな音を立てて扉が開く
確かそこの扉はシュラの部屋だったはず…
輝くのは蒼い髪、光るのは涙
乱れているのは暗い色の軍服
舞っているのは、少し汚れた包帯だろうか
「…っジャック君!?」
「ごんっ…」
彼女はは、と息を飲んでごしごしと目元をこすった
「何でも、ないから」
無理に笑って、自分の横を走り抜けて行った
何でもない?
衣服が破れているのに?
泣いていたのに?
部屋の中にはシュラがいた
「何だ、ゴンザ。アイツの代わりに相手してくれるのか?」
ニヤリ、と卑劣に笑う
相手?…お前なんかの?
そうか、あれはお前がやったんだ
憎たらしいお前が
「… …」
「…何?聞こえんぞ」
「いいですよ、相手してあげましょう」
ニィ、とゴンザは笑った
素早く近づいて深いキスをする
唇を離すとシュラはフ、と笑った
「何だ、案外お前も…っぐ!?」
「どうですか?…毒混みのキスは」
シュラはのどを押さえてのた打ち回っている
死ねばいい、こんなやつ
死んでしまえばいい
どうせ死んでも誰も悲しまないのだから
「解毒剤はオイラが持ってます。けどこれはオイラが使うからダーメ
おやおや、隊長死んじゃいますねぇ?」
くすくす、くすくす
自分と、自分じゃ無い誰かが笑っている
目の前で苦しむ人を見て
くすくす、くすくすと
嗤う、のは誰?
(これで幸せに、だなんてそんなのただの御伽噺)
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