「ん…」
リンが小さな声を上げてごしごしと目をこすり、起き上がった
どうやら気が付いたようだ
「…ご、んざ…?」
「気がついた?大丈夫?」
リンは何も言わずにふらふらと立ち上がり、歩み寄ってきた
倒れそうになるのを支えて
「ここ…どこ…?」
「…わからない。気づいたらここにいて…」
彼女はきょろきょろと周りを見渡して
ふと、鏡に映る自分の姿を見た
その姿
リンの目は右目だけ赤く、それ以外はなんともなっていない
しかし、彼女にはそれだけでも衝撃だったようでぶるぶると震え始めた
「あ…嫌…っ嫌ぁ…!!!」
目を見開いてぺた、と自分の顔に触れる
「ぉ…父様…止めてくださ…ぁああ!!!」
頭を抱えてしゃがみこむ
彼女には…先程の事(なのかは分からないが)がトラウマになってしまったようだ
リンは傍に落ちていたゴンザの割った花瓶の欠片を握り締めた
強く握りすぎて手から血が滴る
リンはそれを自分の顔に向け、突き刺そうとした
「っ!?」
ゴンザは慌ててリンの手首を掴み、抑えた
欠片はリンの頬にかすり、深い傷を付けて床に落ち、砕けた
「やぁ…やだぁ…!!」
リンは顔をゆがめて大粒の涙をこぼした
涙と血が混じりあい、滴り落ちて
床と、彼らを濡らした
「落ち着いた…?」
こくん、とリンは頷いた
また動揺しないように右目に包帯を巻いてあげて
「この傷、…多分残ると思う」
「…」
ゴンザは唇を噛み締めてリンの頬を撫でた
痛々しく開いた、赤い傷口
とりあえず消毒をして、包帯を取り出した
しかしこれ以上包帯を巻いたらきっと何がなんだか分からなくなるから、やめた
机においてあった救急箱を片付け、リンの前に座った
「ゴンザ…ですよね?」
「?」
「私は…誰?」
ゴンザは絶句した
記憶が、無くなってしまったのだろうか
薬の副作用?
いや、それなら自分も何もかも忘れているはずだ
…実験のことは覚えていた
多分相手の顔は覚えていないだろうが
それならショックで?
父に殺されかけたという事実のせいで?
「…何も覚えてないの?オイラのことも、自分のことも」
リンは困ったような顔をした
「ゴンザ…というのは貴方なんだろう?」
(これは彼女の運命?それとも…これも自分の運命のせい?)
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