非公式日本語翻訳です。
自分の文体に改変してるところもあるからニュアンスで読んで。
サンキュー
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ちょっとした解説
スニフ=ケイ:杖コレクター。同じ暗殺班であるあのチェルマクを抑えられるくらいには強い。
ヒカルド:他人の心臓に寄生して身体を奪う魔法が使える。
赤い怪物:ジャードラコン。熱気でテイベルスを氷河期にしない役割をしていたが、魔界から降ってきた黒い気運で狂ってしまった。
カシュパの隠された記録:別の孵化「…くそ…」
氷のように冷たい雨粒が、乾いた頬を抉るように叩いた。
目を覚ました彼が息よりも先に吐いたのは悪態だった。夜の摩天楼の中心、壊れた建物の隙間に押し込まれていたスニフ=ケイがゆっくりと体を起こす。習慣のように髪を撫でつけ、着付けを確認する手は震えが止まらなかった。
金色の星の発する光さえ薄くなった墨色の空に向かって頭を持ち上げる。静かに土地を濡らしていた雨が、血まみれになった彼の顔を洗い流してくれる。しばらく息を整えた。しかし、咥内までは洗われず口の中が苦い。
使徒
その名の重さを知らないわけではなかった。はるか昔、強力な力を持ってこの惑星に乗り込んだという異界の存在たち。同類を見分ける特別な気運を持ったという選ばれた強者たち。
しかし、いつからかその評価がおかしくなったのも事実だ。一夜にしてこの地から姿を消した者が多く、そのうちの何人かは身分さえ不明な者の手に無惨に殺されたなんていう噂まで流れていたからだ。ハーレムのやつらは使徒なんかよりもカシュパという名前に身を震わせていたし、高尚なふりをしたやつらもカシュパの領域の中では命乞いをするのに忙しかったからだ。それにしても……
使徒、イシス=フレイ。
その名前まで軽んじたのは傲慢だった。テイベルスから来た怪物たちの力は圧倒的だった。
一抹の迷いなくモンスターに向かって飛び込んだという"冒険家"と呼ばれる者の気概も高く評価出来るほど。しかし、それらのすべての上に"最も高い者"があった。皆が欲しがっていた闇を吸い取り、一連の事件を終結させた天空の王。
恥辱的だが認めざるを得ない。使徒は強い。ゲズルのリーダーとはいえ、自分自身もゲズルに縛られた身の上。ゲズルを握る者の命令に従ってここまで流れてきたスニフ=ケイは、使徒どころか彼に追従する怪物を相手することすら出来ない、ただのカシュパの手下に過ぎなかった。
「はあ。雨に打たれるのは大嫌いだ」
スニフ=ケイは雨水に濡れて泥だらけになっていた杖を掴んだ。肉が引き裂かれた片方の肩がずきずきと痛む。帰る時が来た。報告をしなくては、あの方々に息の根を止められてしまうかも知れない。取るに足らない情報だが、任務に失敗した部下を生かしておくほど慈愛に満ちた方々ではない。ふと、この杖使い一度だけで無力に死んでいったつまらぬ虫たちの目つきが脳裏によぎる。存在感なく消えていった舞台上の端役たち。
クック、と自嘲的に笑い出そうとしたところだった。
「……ヒカルド?」
振り向く。踏み出す足取りがだんだんと速度を上げる。確かにあいつの魔力を感じた。目の前で姿を消したものが再び、この夜の摩天楼に現れた。いつからここにいたんだ?どうしてまたここに現れた?多くの疑問がスニフ=ケイの頭の中を掻き回したが、今彼を動かすのは一つの執念だけだった。
ヒカルドを探さなければならない。
急ぎながらも気配を隠して足音を消す。意識を失う前の最後の記憶の、あの鮮やかなほど赤い怪物の巣へと向かって戻っていることを理解していたが、足が遅くなることはない。
部下たちを引き裂いた怪物の首を持ち帰れないようなら、ヒカルド、せめてあいつを殺しておくことがスニフ=ケイの生きる道だった。奴の魔力が近づくにつれて思わず腹の内が沸き立った。それが恐怖心のためか、期待感のためかは分からなかった。
「ここだ」
しばらく息を止めて周辺を見回った。焼けつくほど熱い息を吐き出す赤い怪物も、夜の摩天楼の闇を退けるほどに明るく輝く使徒の卵も、どこにも見当たらなかった。
地を濡らす雨音が絶えず聞こえるだけ。ゆっくり息を吐いて目を瞬かせた。
……いや、ある。使徒の卵だ。消えていない。光を失っていただけだ。
壊れた建物の瓦礫の間に鎮座している使徒の卵には、あの圧倒的な魔力も、吸い込まれるようなエネルギーもなにもかもが残っていなかった。
前に見た時はああではなかったのだが。騒ぎのうちに壊れてしまったのだろうか。あんなものでは持ち帰っても良い反応はもらえないだろう。中は空っぽだし、何か残っているだろうか……。
暫く。
ヒカルドの魔力は消えなかった。スニフ=ケイの感覚は間違っていない。再び目を見開き、暗闇を貫くように見つめる。確認しなくても感じることが出来る。
壊れた卵の殻の中に、低くうずくまった何かを。
いつのまにかスニフ=ケイは笑っていた。カシュパのやつらの中にまともに使えるやつなんていないことはよく知っていたが、魔鬼のリーダーである者がこんなにも馬鹿だとは。しかし、おかげで助かった。酷い目にあってしまったが、この言い訳で次々と降りてくる仕事を少しだけでも先送りすることが出来るだろう。悠々と雨の中を歩いて壊れた卵の殻の前に立ってみると、この有り難いほど生意気なやつに適当に寛大な心を与えてやるのもいいかと思った。
「ヒカルド」
返事がないことは予想していた。杖の先についた蛇の頭をゆるく撫でながら思い出す。追う者の最大の美徳は、常に待機にある。
「そんなにも不器用でどうする?これでは見ないふりをするのも難しい……ウグッ!」
突然卵の殻から何かが飛び出し、スニフ=ケイの息の根を掌握した。もがきながら探ってみると、それは確かに手だった。その手は抵抗出来ないほどの強い握力でスニフ=ケイの首を掴み、ゆっくり持ち上げる。肺が詰まってしまったかのように息が止まる。
浮き上がったまま見下ろした卵の殻の中、その闇の中には確かにヒカルドがいた。いつ?なぜ?どうやって……?遠ざかっていく意識の中生まれてくる問いは、続く雨音に埋もれて消えていった。
氷のように冷たい雨粒が、首筋を抉るように叩いた。
ぱちりと目を開けた彼は、口元を裂くように歪め音もなく笑った。夜の摩天楼の中心、壊れた使徒の卵の前に倒れ込んでいたスニフ=ケイがゆっくりと体を起こす。雨に塗れた顔を片手でざっと拭い、こめかみをとんとん叩いて耳に詰まった水を落とした。首元に巻かれた邪魔な装飾をむしり捨て、肩を一度すくめ、壊れた卵の上に乾いた手を乗せる。杖なんかを使わなくても流した魔力に卵の殻が反応して、その体を浮かべる。やがて、彼は振り返る。
帰る時が来た。
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