非公式日本語翻訳です。
自分の文体に改変してるところもあるからニュアンスで読んで。
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公式ページ

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中国のも


ちょっとした解説

メカニック・ジゼル：天界の元セブンシャーズでありカルテルに身を寄せた裏切者、マッドサイエンティスト。使徒ルークの所で技術を奪い去り、魔界にたどり着いたところで人工のアビスを作り上げることに成功した。それに目を付けたワークマンにカシュパへと連れてこられ、カシュパに協力することになった。
"女"：第二使徒泣く目のヒルダー。全ての元凶であり黒幕。天界のカルテルが力を付けたのも、カシュパが力を付けたのも、サルポザに力を与えたのも、ジゼルを魔界に移動させたのも、全部全部ヒルダーがやった。

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#4　帰る時間


男が着ている服はぼろぼろで、白髪は黒く汚れ、鼻先にかけた眼鏡は片方が割れ、眼鏡本来の機能を失っていた。顔の傷口からにじみ出た血が、額から流れた汗と混じり床に落ちる。しかし、男はこれらを気にも留めずに必死に走っていた。

「ケケケ……」

乾いた笑いが漏れる。
カルテルが解体されてからは皇室に指名手配された。かろうじて追跡を逃れたが、特別部隊まで編成して追いかけてくる皇室の犬たちを振り切るには力不足だった。使徒アントンが現れ彼らの気を散らさなければ、おそらくとっくに捕まっていただろう。しかし、それもつかの間のことだ。使徒アントンは倒され、混乱した状況は急速に収拾してしまった。事が済めばまた追跡を受けることになる……。

しかし、男はまだ捕まるわけにはいかない。まだ果たせていないことがあまりにも多かったからだ。

男は直ちに逃げる計画を立てた。しかし、すでに天界の中にはどこにも行き場がなかった。ゲントがある皇都はもちろん、イートン工業地帯やノースピースにも天界軍が満ちていた。ヒリング諸島内にある大小の島々はもとより、さらに、これまで放置していたウェスピースにも、天界軍が押し寄せてきた。そのため、あらかじめ準備しておいた隠れ家もすべて破壊されてしまい、備蓄しておいた物資も底をついた。今回は逃さないという天界軍配下の戦略情報局の意志だった。
結局、男は選択を余儀なくされた。これ以上天界に止まっていては、処刑場で死に行くこととなるだろう。それなら、天界ではないところに行かなければならない。

すぐに頭の中に浮かんだのは、「下の世界」と呼ばれる場所だった。アラドと呼ばれる大陸だ。
あるいは深い霧に隠れた仙界、そして使徒アントンが死んだために姿を現した正体不明の建物と、そこを通じて行けるという未知の世界"魔界"。数多くの予測が男の頭をよぎったが、答えは出なかった。

アラドに向かえば、天界軍と手を組んだ帝国というやつらの追撃を受けるだろう。仙界も同様だ。仙界へ行く航路はすべて軍に封鎖されているだろうし、たとえ開けたとしても霧に包まれて仙界に入ることすらもできないのが目に見えていた。本当に運が良ければ可能かもしれないが、ほとんど0に近い可能性に命をかけるほど馬鹿ではなかった。
だからといって正体不明の建物に上がるのも無謀だった。いま一番皆の注目が集まっている所でもあるし、それを二の次にしてもあんな所に上がって何ができるというのか。

男が解決しない悩みを抱えていたとき、女が現れた。ミステリアスな雰囲気の女は、"魔界の魔法使い"なのだと自己紹介した。天界のものはでない服装、全身から漏れ出る不思議な感覚と、理解の出来ない威圧感を漂わせていた。女はぼんやりと自分を見つめる男に、挑発的な提案をした。件の正体不明の建物に上がれという話だった。

「最良の選択です」

他の選択肢がなかった男は騙されたつもりで女の言うことに従った。正体不明の建物は"死者の城"と言った。ここには、バカルやアントンのような使徒がひとり滞在しているという。そして、彼の知識を得れば望む全てを成し遂げることができると言った。

そして、それは真実だった。女の言うとおり、たやすく使徒の知識を手に入れることが出来た。そうして得た知識は想像以上で、生涯積み重ねてきた知識を遥かに越える新しいものばかりだった。
驚くべきことはここで終わらなかった。優れた知識と技術があっても、これを支える材料がなければ知識がないほうがましだ。しかし、"死者の城"にはその材料があふれていた。
使徒に従って死んでいった者たち…いや、機能が"停止"した生体。彼らの肉体はすぐれた材料だった。男は知識の狂気に染まり、死者の城の深いところに隠れ、これらの資料を用いて多くの知識を吸収した。



そしてどれくらいの時間が流れたのか。女が再び現れた。
「魔界に行く時です」
男は笑った。

女の導きを受けた男は死者の城を抜け出し、初めて魔界に足を踏み入れることとなった。暗黒に満ちた絶望の世界。しかし、男の目には多彩なものが満ち溢れている宝の山に見えた。
その中でもっとも輝いているのが"アビス"だった。形のないものだが無限のエネルギーを宿しており、命さえも目覚めさせることの出来る神秘の材料。こんなものを命がけで体に移植するなんて狂人の考えだ。しかし逆に、この狂気の沙汰を平気でしでかす魔界人たち、特にカシュパというやつらに興味がわいてきた。

男は不完全ではあったが、アビスを使った彫刻を作り上げた。やがて、それに興味を示したカシュパがやって来た。多少荒っぽかったが、やつら的にはそれなりに丁寧なやり方らしかった。いずれにせよ勅使というやつに出会い、その後続いて首長と副首長というやつに会った。やつらが私に望むのは一つだけだった。"アビスのかけらを使って武器を作ってほしい"そして、アビスを抱いて死んでいく者を改造して使い物にしてほしい。こいつらは本当に完全な狂人だ！それも、男の好みとピッタリ合うような！

男は喜んで参加し、それにふさわしい設備を与えられた。カシュパのやつらはどこで手に入れたのか分からないが、アビスを抱いて死んでいく材料をよく拾ってきた。もちろん、とうに死んでしまってアビスが消滅した材料は使うことができなかったが、それでも十分だった。機械に改造して使えるように作るのは男の特技だったからだ。



「終わった」

男は失敗した。
最初にカシュパのやつらに聞いた時は、"魔法一つで生き延びてきた遅れた文明のやつら"と言われていた。すべてを注ぎ込む価値のない相手だと思っていた。カシュパが望む通りに武器を作り、適当にやつらを倒し、最終的に自らが欲しいものを手に入れてしまえばそこで終わりのつもりだった。しかし、男は失敗した。

人間の知識を持っている時も、世界を揺るがせたといううぬぼれがあったのは事実だ。しかし、これは失敗の原因ではない。死者の城から得た使徒の知識をすべて活用しなかったのも、失敗の原因とはいえない。
はえ取りにゲイボルグが使えないことだったっけ？

正直に言ってカシュパがもたらす材料には限界があったが、その中でも最も効率的に動いていた。魔界を征服することはできなくても、勢力を大きく拡張できる基盤を整えるのには十分だったはずだ。

男が考える失敗の原因はたった一つ。予想できなかった大きな変数。"冒険者"と呼ばれる存在だった。

カルテルに身を置いていた時も、冒険者のせいで全てが台無しになった。今ここにいるのも冒険者のせいだ。何かを成し遂げようとすると、鬼神のように現われてすべてを破壊してしまう。それは今回も同様だった。あのメルビンと同じようにイラつく存在だった。
女はこれもまた刃を研磨するための過程だと言ったが、そのようなことは重要ではなかった。重要なことは、今回も冒険者にやられ、この長い複雑な通路で下水の臭いをかぎながら走らなければいけなくなったということだ。

いつの間にか実験室が見えてきた。戦闘の衝撃なのか、ドアが壊れて無くなってしまい、入り口のあちこちは崩れ落ちていた。運が良かったのか、男の体が割り込める隙間くらいは開いていた。
中は入ってしまえば広い空間だ。一部は崩れ落ちた瓦礫に敷かれて形が分からなくなっていたが、男が必要とするものは無事だった。隙間を縫って入る時に服が裂けて傷つき血がにじみ出たが無視をして、必要なものを探し始めた。

「これも持って行って…これも必要だ。そして…シスレーの生体改造データを持ち出したのが…ここにある。おっと、最も重要なデータチップ！忘れちゃいかん」

しばらく荷物を詰めていた男がはっと頭を上げる。今までとは違って、ぞっとするような無表情で一方を眺めた。そこには自分をここに導いた女が立っていた。男は沈黙したまま女を見つめた。視線を浴びた女はそっと微笑み、杖で床を軽く叩いた。杖の先から澄んだ音が響き渡ったと同時に、男の頭上に落ちてくる巨大な瓦礫が時間が止まったかのように停止した。



「そろそろ帰る時間ですよ」

男は頭上をちらっと見て、瓦礫を避けて前に進んだ。女が魔法を解くと、その男が立っていた場所に巨大な瓦礫が大音を立てて落ちた。

「ケケケ…欲しいものはものはすべて手に入れた。ここに未練はない」
「そうですか、それはよかった」

女が再び杖を振ると、空間に亀裂が生じ、様々な次元の扉が少しずつ開いた。この様子をじっと見つめていた男は、理解したというふうにうなずいて、大事な荷物をぎゅっと握った。

「今回はどこに行くんだ？」

完全に開いた次元の扉に入る前に、男は女に向かって振り返りながら尋ねた。今まで女の言いなりになってきた。行く先々で新しいものがあり、多くの知識を得ることができた。思えば、はるか昔に会った女とよく似ている気がする。たしか、あの時のあの女も…。

「死者の城です」

男の口角が上がった。そして"ケケケ"という笑いとともに後ろも振り返らず次元の扉に飛び込んだ。まもなく開いていた次元の亀裂はなくなり、元の空間に戻った。

全てが終わると女は微笑み、足を運んだ。崩れた壁越しに神に挑戦でもするかのように空高くそびえ立つ塔が見えた。そして、その上に正体不明の黒い球体が徐々に大きくなっている。周辺の空気が尋常でなく揺れ動き、黒い球体の圧力のためか、塔に少しずつ亀裂が入っていた。こんな危なげな場面でも、女は平然とこれを見つめ、立ち去った男が聞きそこなったことをつぶやいた。

「そこなら懐かしがっていた故郷に戻ることが出来るでしょう。ジゼル＝ローガン」




いつのまにか女が見た風景は変わっていた。巨大な黒い球体はゆっくりと地面に落ち、蒼空の主が現れ球体を消滅させた。一瞬、世の中が止まったような、刹那の静寂。それを見ていた女は、杖を持ち上げて床に叩きつけた。彼女の周辺に魔法陣が現れ、まばゆい光が輝く。

「さあ、みな帰る時間です」

その言葉を最後に女は姿を消した。
最初からここにいなかったかのように。