短いやつまとめ
古↑ ↓新
2019/08/27
セルゲイの声に対する、ワークマンのつぶやき
弟子となったセルゲイにアビスを移植するよう勧めたのは俺ではあったが、まさか口に移植するとは思っても見なかった。
「師匠」
澱んでいた目は濡れたように輝き、引きつっていた唇は柔らかく微笑み、低いながらも通る声が俺を呼んでいた。
――ああ、あの声はもう聞けないのだな。少しだけ残念だった。
2019/08/29
セルゲイの笑顔、過去と今
ノックもなく執務室の扉が開く。
「セルゲイ、部屋に入るときはノックをするものだ」
書類から目を離さずにそう言うと部屋に入って来た気配が動揺するのが分かった。
「そう……ですか。わかりました、師匠」
そうして気配はまた外へ出ると扉を閉め、控えめなノックが響く。態々今実践しなくとも良いだろうに。
おずおずとまた部屋に入ってきては「これで……よかったでしょうか?」などと聞くので「ああ、それでいい」……その言葉にセルゲイはうれしそうに微笑むので、こちらも思わずくすりと笑みをこぼした
「今後は忘れないようにします、師匠」
「ああ」
……それも今や昔の話だ。
――控えめなノックが響く。
「入りなさい」書類から目を離さずにそう言うと酷く薄い気配がするりと音を立てずに部屋に入って来た。
「作戦は上手く行ったか?セルゲイ」
書類を机に置くと、顔を上げて机の前に立った男に目をやった。
我が弟子。ブルースカーのリーダー、沈黙のセルゲイ。口の利けぬ強きディメンションウォーカー。
セルゲイは長いアッシュブロンドをさらりと揺らして頷いた。
漏れる声は低く濁った唸り声だ。もう意味のある言葉を話すことはない。
「それは何よりだ。流石だな」
しかし表情は失せてはいない。黒いレザーのマスクに覆われた口元は兎も角、晒されたままの青い目は以前と同じく嬉しそうに微笑んだ。
2019/09/15
死にゆくセルゲイの、間際
アビスが暴走した。
負けてしまった情けなさと師匠やサルポザ様に対する申し訳なさと死にたくないという気持ちが脳内を駆け巡り、振り返ったそこには険しい顔をした師匠がいる。
「(師匠)」
声にならぬ声はきっと師匠になら届いているだろう。
舌が焼け焦げる。まばゆい青白い光がマスクを引き裂いた。
2020/02/04
140文字で書くお題ったー
貴方は勅使沈黙で『カーテンコール』をお題にして140文字SSを書いてください。
すでに事切れたセルゲイと、死にゆくワークマン
関係が長いものでもないことを、結局のところお互いなんとなく分かっていた。
それでもこんな所で終わってしまう事は想像していなかった。
我々の幕は下りた。関係の清算をする暇もなく、カーテンコールをしたらそれで終わりだ。
「あの方の、計画通り」
皮肉気に笑って、視線は息の無いお前に固定して。
2020/02/19
一つ一つ脱がされていくセルゲイ
軽い音を立てながらコルセットのベルトが外されていく。胸のハーネスは疾うにベッドサイドに落ちている。
彼の大きな手で軽装にされていくのが恥ずかしく、私はレザーマスクに覆われたままの口元をさらに手で覆った。
「……自分で脱ぐか?」
照れる様子を見てそう聞いたようだが、私は目を細めて首を横に振った。どうか、貴方の好きにしてくれと。
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