クムロニンブスのもたらした水とブロッサムの加護により咲き誇った様々な草花が広がる高原は、黄金の楽園テイベルスの中でもひときわ美しく、ケフロスとハルバートのお気に入りの場所だ。
ケフロスはその場所に伏せて暖かな太陽の光に照らされながら、風や草花と戯れるハルバートを眺めていた。
動くたび風に揺れる銀の毛は光を含んできらきらと輝き、見事な花畑が霞むほどに麗しい。
「君は美しいな」
ケフロスは微睡んで無意識のまま漏らしてしまった言葉を自分でも一瞬理解できず、理解した瞬間カッと頬を染めて目を反らした。
クスクスと上品な笑い声が聞こえて、ますます顔が熱くなってしまう。
「フフ、急になに?貴女も美しいわよ、ケフロス」
「いいや、私は……」
「何を言うの。貴女は私の思う一番美しくて愛しいひとだわ」
花畑の美しい草花を避けながら銀色の毛を風に靡かせてハルバートが歩んでくる。
テイベルスの皆に愛されているから私を選ばなくても良かったのに、彼女はこの私を選んでくれた。
「……君が好きだ、ハルバート」
「あら、私は愛してるわ」
ケフロスが恥ずかしそうに告げた言葉にハルバートは甘く微笑むと、頬を擦り付けて何でもないように愛を伝えた。
「そうか……そうだな。私も……君を愛しているよ」
ケフロスは困ったように、しかしとても嬉しそうにはにかみ、同じように頬を擦り付けたのだった。
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