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とらんす魔女3。
カオス。




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ごろごろ転がって、何度かリモコン(面倒臭いからこの呼び名でいいや)に触れてエネルギーを溜めていたが、いい加減その単純作業にも飽きてしまった。
思っていたよりもふかふかになって、実に居心地のいい布団から身体を起こすと、ふぁあ、と欠伸をした。

「ここの色んな部屋の確認がてら空中散歩でもしましょうかしらね」

まだもう少し気だるい。箒を掴んで、もう一度欠伸。
リモコンをウエストバッグにつっこみ、窓を開けて箒に跨った。

ふわりと飛び上がり、私は部屋から出た。
モニターのある部屋は相変わらず誰もいなくて、ムダに広いなぁと思った。
皆、どこにいるんだろう?

それから、他の部屋に繋がってるであろう扉の前に来て気付いた。
……しまった、私じゃこの扉は開けられないぞ。
仕方ない、と私はため息をついて引き返した。

ふわり、とモニターの前に降りる。
モニターはとても大きくて、その下に広がるキーも私の手のひらよりずっと大きかった。
私のいた世界のキーボードとは全然違って、どうしたらどうなるかも分からないので触らないことにした。

モニターには、なにやら戦いの様子が映し出されていた。
やっぱり、ここはトランスフォーマー達の世界らしい。
戦っているのは全員トランスフォーマーみたいだ。

「派手ねえ」

青と赤の大きなトランスフォーマーが吹っ飛び、崖から滑り落ちている。
崖はガラガラと崩れ、青と赤のトランスフォーマーは大きな叫び声をあげた。

この世界は戦争でもやってるのかしら。
派手な戦いだ。きっと世界はボロボロになってしまっているだろうに。
――そういえば、私の箱庭の外では戦いをやっていたらしいな、なんて。

物思いに耽っている間に、いつのまにやら戦いは終わっていた。
両軍ともに引き上げているのが見えた。
……あれ、あの銀色のトランスフォーマー、なんか見覚えがあるわ。あの青いのも。

……まさか、なんて私は考え込んでしまった。
戦争してるからエネルギーが足りないのかしら。
なんとなく覚えてる限り、どうやら敵側のが優勢みたいだし……。

うーん、と考えていると、音を立てて大きな扉が開いた。さっきあきらめた奴だ。
どうやらメガトロンさん達が帰ってきたらしい。
彼の後ろにはサウンドウェーブさんと、スタースクリームと、それから知らないトランスフォーマーが沢山いた。

「ええい、おのれコンボイめ」

……機嫌、よくないみたい。早く退散した方がいいかしら。
そんな事を思いながら、私はふわりと飛び上がった。
ところが、部屋へと戻る途中でメガトロンさんに見つかってしまった。

「おい、貴様どうやって部屋から出た」
「え、あ、ええっと……」

イタズラをしていたところを見つかってしまった気分だ。勿論そんなヘマをしたことなんてないけれど。
メガトロンさんは大股で歩いてきて、乱暴に私を捕まえた。
怒ってるみたいだ。ぎろりと手の上の私を覗き込む。
あれ、メガトロンさん……怪我、してる?

「まさか逃げようとでもしたのか」

私はそんなメガトロンさんの言葉を無視して、そっと頬の傷に触れた。
ばち、と電気が爆ぜる。――とたん、静かにその傷が塞がった。
私は驚いて手を離す。バランスを崩してメガトロンさんの手の上に転がる。
え、私って治癒能力でもあったの?……ああでも、帯電してた電気で治っただけかも。

メガトロンさんは気付いていないらしい。私は即座にあの部屋に投げこまれた。
どうやらこの部屋の中の改革にも気付かなかったらしい。
……そんなに周りが見えなくなるくらい怒ってる、って事だろうな。

機嫌が悪いメガトロンさんは、怖くて苦手だ。
あんなに優しかったのに、と私はため息をつく。
ベッドに座り、カーテンを少しだけ開けて、様子を伺う。

それぞれが自分の修理や仲間の修理をしていた。
顔の傷だけがすっかり癒えているメガトロンさんは、サウンドウェーブさんに修理してもらっていた。
体の修理が終わったところらしく、顔の修理に取り掛かろうとして止まる。
サウンドウェーブさんは首を少しだけ傾げ、メガトロンさんに話しかけた。

二人ががくるりとこちらを向いた。
私は反射的に後ずさりしてカーテンをしめた。
柄にもなく、体が飛び上がるほど驚いてしまった……。
部屋の扉が開く。入ってきたのはメガトロンさんだった。

「何だこの部屋は、ワシはこんな部屋知らんぞ」
「魔法で改造したそうです。そうだったな?」
「そうですけど……あの、何か?」

メガトロンさんはサウンドウェーブさんの腕を掴み、私に差し出した。
小さな傷がある。動けなくなったりするとかいう傷ではなく、なんども擦ったりぶつけたりしたような傷だ。

「ワシの傷を治しただろう、同じようにやって見せろ」
「えっ」

触っただけなんですけど、なんて。それに、多分充電出来てないと思う……。
まぁ、そんな言い訳が通じるはずもないので、私はそっとサウンドウェーブさんの腕に触れた。
パチ、と軽い音がして電気が爆ぜる。傷は、ゆっくりと消えていった。

「……信じられん、これは思わぬ天からのプレゼントというわけか」

メガトロンさんはにっこりと笑い、さっきと違って優しく私を拾い上げた。
どうやら機嫌は直ったらしい。よかった、少しだけ安心する。
サウンドウェーブさんも元より綺麗になった自分の腕を見て感心している。

「貴様、レイと言ったな」
「あ、はい」
「レイ、余の部下にならんか?」

部下?そんなの、考えてなかった。ただの居候程度だ、なんて思っていた。
――そうか、この世界は今戦争をしているんだ。
でも、私は彼らよりも貧弱だし、それに魔法以外に何も出来やしない。

私は知らぬ間に不安そうな顔をしていたんだろうか?
メガトロンさんは私をじっと見つめ、静かに笑った。

「エネルギーを溜め、余を癒してくれればそれでよい」
「……でも、」
「余がいいと言っておるのだ」
「……わかりました。なります」

ならなかったら追い出されそうだし、なんて。
追い出されたら私はどうすればいいのか分からないから。
メガトロンさんは満足そうに頷き、私を手の上に乗せたままモニターのある部屋に歩いていった。
その後をサウンドウェーブさんが一歩引いてついてくる。従順な人なんだな、と思った。

「おい、貴様ら。今日からこやつも我らの仲間となった」

どよ、と辺りがざわめいた。
あんな人間を?とか、あんなのが戦えるのか?とか、頭悪そうだけどな、とか。
……頭、人よりはいいつもりなんだけどな。

「なっ、ん、メガトロン様!何を考えてらっしゃるんで!?」

スタースクリームが声を荒げた。そして私をぎろりと睨む。
私はまた武器を向けられるのではないかと怯え、メガトロンさんの人差し指にしがみ付いた。

「何を考えているも何も、こやつは素晴らしい能力がある。ワシ専用だがな」

どうやら私の治癒エネルギーみたいなのはメガトロンさん専用らしい。
そういうの職権乱用って言うんじゃなかったっけ。
スタースクリームは納得いかないようだったが、舌打ちをして大人しく下がっていった。


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